人工知能は人間を超えるのか

松尾豊著「人工知能は人間を超えるのか ディープラーニングの先にあるもの」を読みました。その内容について、自分なりにまとめてみました。不正確な部分もあるでしょう。

この本は今年3月に初版発行された本で、人工知能の過去から現在に至る歩みが書かれています。新聞紙上でも複数の識者が推薦していた本で、一般向けの人工知能の解説本の定番といっていい本なのではないかと思います。

人工知能が人間の仕事を奪ってしまうとあおっている書籍が世界的なベストセラーになっているようですが、実際のところはどうなのかということが気になっていました。

まず、人工知能が発達してきて、チェスや将棋が人間のプロにも勝つようになってしまったのは周知の事実です。このように特定の分野では強くなっています。
一方で、おもちゃの問題は解けても、現実問題は解決できないではないかと、期待と失望を繰り返しつつ歩んできた歴史が記されていました。

エキスパートシステムという、専門家の知識を詰め込んだシステムの開発も行われました。1970年代初めにスタンフォード大で開発されたMYCIN(マイシン)は、感染症の専門医のように患者を診断し、抗生物質を処方するシステムでした。
けれども、知識の記述はきりがない、人間の表現はあいまい、記述する知識の間に矛盾がある場合もある、等々、数多くの問題があります。

ディープラーニングは、50年来の大発明ではないかという著者の見解が載っていました。ディープラーニングは、多階層のニューラルネットワークです。

ニューラルネットワークは以前から存在していたコンピュータ上での分類手段の一つです。一つのニューロンが複数の入力値を受け取り、一つの出力を返すという概念です。各入力値に対して、それぞれ異なる重みづけの数値をかけて、足し合わせます。この数値をシグモイド関数にかけると、オン、またはオフという結果が得られます。

このニューラルネットワーク、以前は重みづけの数値を人間が設定していたようで、3層まではうまくいっていたのですが、それ以上の階層に増やしても精度を向上させることはできなかったそうです。ところがディープラーニングでは、多階層にして精度を向上させることができるようになり、また、特徴をコンピュータが自動的に見付けることができるようになったらしいのです。このことで、画像認識の分野で、それまで人間が職人技によって、エラー率を年に約1%ずつ減らしていたのが、一挙に10%程減らすという快挙が2012年にカナダのトロント大が開発したSuper Visionで達成されました。

このディープラーニングが一つの大きなきっかけとなって、人工知能が進展していく可能性があるそうです。ただし、人工知能研究において重要な要素の一つに過ぎず、まだいくつもの山があるそうです。

シンギュラリティー、すなわち技術的特異点の話があり、人工知能が、自身よりわずかにでも賢い人工知能を生み出すことができるようになると、一気に非常に賢い人工知能が生み出されてしまうことにつながります。それが2045年頃にやってくるという説があります。そうなったら脅威だと何人もの著名な研究者らが唱えています。
けれどもこれは可能性の一つです。いままでの人工知能研究の歩みは予想よりも遅かったそうです。

東ロボ君という、大学入試センター試験の受験をしているロボットの得点が向上し続け、多くの私立大学に合格できるレベルに達しているそうです。けれどもこれは、問題の意味するところを理解しているのではなく、ネット検索によって関連があると思われることを回答しているに過ぎないそうです。同様に、翻訳ソフトも意味そのものを理解しているのではないそうです。このため、本当に使えるものになるのはまだ先とのことです。

人工知能が人間を支配してしまうなどというのは、まったく荒唐無稽とのことです。それは人工知能が生命を持たず、持つ見通しも立っていないからです。

ビッグデータの活用は進展してきていて、これは様々な分野の仕事に影響を与えることになるようです。

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